東雲侑子は恋愛小説をあいしはじめる

前作東雲侑子は短編小説をあいしているから舞台は進み高校一年生だった彼らは高校二年生になっていた。前作からの王道作品の流れを引き継ぎ今作もまた王道路線を歩んでおり、THE二作目という感じのストーリー。主人公三波英太に思いを寄せる人が現れる。しかもヒロイン東雲侑子とは正反対の明るくて物怖じしないタイプでいつもクラスの中心にいるような人間だ。喜多川絵夢というのだが英太は彼女と東雲との間で心が揺れ動くが、最後は東雲と歩む道を選ぶ。ざっくりいうとこんな感じのストーリ。

王道展開だけあって面白い。ただ安心していられるかというと自分の場合はそうでもなかった。案外この二人本当に別れるんじゃないだろうかと思いながら読んでいた。というのも、まずこの東雲シリーズが全三部作ということを既に知っているので「もしかして、ここで一度別れてから、三作目でまたくっつくのかな」というメタ推理をしてしまったというのもあるが、それ以上に二人の空気感の微妙さが文章からぬるぬる伝わってきて、それは英太の心情描写でもそうだし二人が少しからかいあいながらしてる会話からも二人の間にある距離を感じ取ることができた。

また章の冒頭に前作同様東雲の小説が挿し込まれているのだが、その内容は東雲の心情を描写しており東雲は作中英太のことを憎らしく思っていたというのが面白かった。東雲は普段から感情を表に出すことをあまりしないし、そもそも感情が薄い人間だと思っていた。「私が悪いの」というどちらかというと自己犠牲で身を引くタイプかと思っていたので英太が他の女性と仲睦まじくしている姿をみて憎らしく思っているというのは本作で一番衝撃をうけた。

二作とも面白く拝読したが、この先一体どういう展開になるのだろうか。正直今作品で話自体はきれいにまとまっている気がするのでここからぐだらなければ良いなという思いもあるし、先の読めない展開への楽しみもある。